8a96cc75.JPG「よつばと!」は漫画ですが、物語ではなく小説。起承転結のあるドラマではなく、日常の一断面を鮮やかに切り取ったシークエンス。
本当は毎日がこうしたシークエンスの積み重ねでできているはずなのですが、ついつい幸福なシークエンスを噛みしめることなく流してしまい、辛い出来事ばかり印象付いてしまう。そんなことはない。何気ない挨拶のひとつにも、仕事で「ありがとう」と感謝されたりする中に幸福は詰まっている。それに気がつけずにあたふたしてしまう忙しさが自分を見失わせる。他人を見過ごしてしまう。
愚にもつかない小説が、これまた愚にもつかない言葉を綴って飾り立てる凡庸な言説よりも、この台詞の少ない「よつばと!」はぼくに一瞬の大切さを確認させる。そしてその一瞬はまさに一瞬であり再現性はない。だからこそ毎日の中の一瞬の幸福を確かに受け取り噛みしめる必要がある。
失われた時を求めても戻っては来ない。その後悔を明日に活かそう。明日の幸福な一瞬を大切にしていこう。
ぼくは「よつばと!」を読み返すたびにそう思う。
しかし一瞬は戸惑う暇もなく流れ去り、毎日「明日こそ」と誓うことになる。それでもいい。明日こそ幸福な一瞬を噛みしめたい。