keyboard_a15

幼稚園のときにオルガンを習わされていました。
オルガンといっても、ジミー・スミスが弾くようなオルガンではありません。さすがに足踏み式ではありませんでしたが、嫌な音だなぁと子供ながらに感じる電動オルガンでした。

電源を入れると不快なモーター音が唸り出し、鍵盤を押せば陰気な音がひり出てきました。足踏みオルガンのほうが素朴な音色で好感がもてました。
 
課題曲も単調が故につまらない。弾いていて全然楽しくありません。あまりに苦痛だったので、母親に懇願して1年でやめました。

後年、妹がピアノを習うというので、アップライトピアノが家に入りました。アップライトとはいえピアノの音は美しかった。単音をピストルショットで弾いても、和音をポーンと叩いても楽しかった。

簡単にアレンジされたジャズの譜面を自分で購入し、リチャード・クレイダーマンを練習する妹のあとで、「いつか王子様が」と「バードランドの子守唄」に挑みました。

しかし碌に勉強もしないでレコードばかり聞き、ヘタクソなギターを弾いてのうえですから、母親から「うるさいからやめろ」と叱られる始末です。

私もヘタクソなピアノは騒音(東京の狭い家の中ですから、隣室のテレビの音までも掻き消してしまいます)だと自覚していたので、気兼ねして鍵盤とは徐々に疎遠になりました。

結局、キーボードとは復縁もなく現在に至ります。

そのときの反動なのでしょうか。大して弾けやしないのに、ギターとギターアンプは購入と放出とを繰り返しています。防音室の中では誰かに気兼ねする必要がありません。自分が満足するまで「騒音」を立てることができます。これが実に気持ちが良い。

気がつくと、ギターとオーディオには財布の紐がついつい緩くなってしまうのです。

(イラスト・ポップさんからイラストをお借りしました。)
https://illpop.com/png_musichtm/keyboard_a15.htm