私が中高生の頃は、エレキギター = フュージョンでした。
私は今でも高中正義ばかり弾いていますが、増尾好秋・渡辺香津美・和田アキラも大好きで、少ないお小遣いで彼らのレコードを買い、ギターの耳コピーに励んでいたものです。もちろん難しすぎて正確なコピーなんてできませんでしたが。
当時のフュージョン界のトップ・ギタリストは Lee Ritenour と Larry Carlton で、共に Gibson 335 をトレードマークにしておりました。
その頃はプロでも10万円台の国産ギターを使っていたのですから、30万円を超える Gibson や Fender は今では考えられないほどに高嶺の花でした。
何時の日か Gibson 335 を購入するだけの財力と弾きこなす演奏力を身につけたいと少年きんたこは願っておりました。
そののち人並みに就職をして、10万円程度ならば自由に使える財力がつきました。嘗て欲しくても買えなかったギターを購入しては下取りに出すことを30年近くも繰り返して、これだというお気に入りのギターが定まってきました。
ヤマハのSG800とSC3000です。この2本のギターはネックの具合といいコンターのバランスといい、なによりルックスが絶妙に私の好みでした。
この2本をメンテナンスしてこれからも使い続けよう。磨り減ってしまったフレットは打ち直し、使い難くなったペグも交換しよう。古くなったコントロールポット・キャパシタと配線材もグレードアップしたい。そして量産品にない美しいカラーでリフィニッシュすれば、本当の一生モノのギターになるはずだ。
しかしヤマハのエレキギターにはオリジナル・パーツが多用されており、劣化して交換が必要になっても入手が困難もしくは高額になることがわかりました。またメンテナンスとリフィニッシュを敢行すると、本体価格を大きく超える費用になることも判明しました。
確かに愛着のあるギターは大切にしたい。しかし同じ金額で新品の Gibson や Fender が買えるなら、そちらの選択のほうが良いのではなかろうか?
あるときイシバシ楽器のサイトを眺めていると、ブルーのシースルーが美しい Gibson ES-335 が数量限定で販売されていることを知りました。
うつ病の症状の一つに精神が不安定かつ強迫性を帯びることがあげられます。
このギターの発売を知ったのは運命的だ。少年時の憧れがここで叶うのだ。この機会を逃したらもう二度とこのギターを手にすることができないだろう。これは是が非でも手に入れなければ…。
札幌の楽器店には並ばない特別なギターです。ネットの限られた情報だけを頼りに、無理矢理なローンを組んで購入してしまいました。
そして「少年時の憧れ」が届きました。逸る気持ちで荷解きをしてギターを手に取りました。
…!
ディスプレイで見たのとブルーの色合いが全然違う!
杢目もなんだか魅力を感じられない!
抱えてみると今までのソリッドギターよりも大きく、コンターもないのでホールドしにくい、プレイしにくい!
認めたくなかったのですが購入は失敗です。ES-335 は私ごときが所有できるギターではなかったのです。
更に憧れが強過ぎて、弾くのがもったいないといった気持ちが強く、ケースの中に仕舞い込んだままとなりました。
結局、都合10時間も弾いていないのに、ローンが終わるやいなや売りに出してしまいました。